39 ソフト路線ですか?

マンドリン属の楽器を弾くときは当然ピックを使うわけですが、いやこれがですね、たかがピックと思いきや、なかなか奥が深いもんですねえ。
昔は(と言ってもそんなに昔じゃありませんが)鼈甲のピックが当たり前だったのですが、今はいろんな素材のピックが出ています。以前にもお話ししたことがあると思いますが、鼈甲以外にセルロイド、ナイロンなどがあります。

私は仕事柄いろんなピックの音を聴くのですが、正直申しましてどれが一番良いという断言はできません。
ただ、曲や楽器や弾き手の相性はあると思います。これは弦でも同様のことが言えます。弦も今やいろいろな種類が出ていますね。(ちょっと出すぎ?)一昔前では考えられなかったことです。これも状況に応じて種類を変えて使うことが、最近では当たり前のようになってきました。

このように楽器を取り巻く周辺素材が増えると言うのはある意味良いことだと思いますし、弾くにせよ聴くにせよ、より繊細に敏感に音を感じ取る、つまり音楽にとって最も重要な「音」という素材の質を高めることができると思いますね。

ところで、良い傾向だと言う前提で現状を見てみますと、総じて「音質のソフト化傾向」を私は感じています。まあ、これは違う言い方をすれば総じて昔は音が汚すぎた、という見方もできるわけなのですが、私は決して過去がダメと言うことを言っているのではありません。マンドリンの環境も時間の経過とともに、それなりの進化を遂げていると言うことではないかと思います。そのひとつの表れとしてソフトな印象を受けているのです。
最近、私はドイツのプレーヤーの演奏を聴く機会があるのですが、ドイツはまさにその究極と言っても良いかもしれません。ピックはラバーのようなもので、弦はトマスティーク(非常に柔らかく精度が高く値段も高い)を使用しています。

一方、鼈甲ピックが廃れていっているかといいますと、実はそうではなく、逆に見直されていることもあると思います。所謂、石油製品とは決定的に違う音がしますし、「これぞマンドリン!」と思うような音色がしているのも事実であります。ただ、その中でもただ掻き鳴らすのではなく、どれだけ綺麗に柔らかく音を出すかと言うことが非常に重要になってきてはいると思われます。

以上の通り、現在の日本のマンドリン事情と言うのはソフト路線を歩んでいるように思われます。私はこれは斯界がよい意味で変わってゆくチャンスだと考えています。
普段はなかなか回りのことが見えにくいと思いますが、この話を聞いて皆さんはどのように思いますか?演奏会などを聴きに行ったときに少し気にしてみてはいかがでしょうか。