45 バロックマンドリンについて

 

昨年12月にバロックマンドリンを使った演奏会を開催いたしました。
バロックマンドリンにはあまり馴染みが無いと思いますので、今回は私がわかる範囲でご紹介したいと思います。

バロックマンドリン

楽器の起源は9世紀から10世紀に遡ります。マンドーラ(Mandora)という弦楽器が使われていたのですが、その後マンドーラ(Mandola)という微妙にスペルの違う楽器として発展することになりました。 楽器の形は現在のマンドリンよりも薄くて丸く、どちらかと言うとバロックリュートに近い形をしておりました。弦は復弦の6コースです。(つまり12弦あるということです。)
当時はガット弦(羊の腸でつくったもの)を使用しておりましたが、現在ではナイロン弦またはカーボン弦を使用します。調弦は低音から gg-bb-e'e'-a'a'-d''d''-g''g'' となります。 材料は表板が、松でボディはカエデを使用しているものが一般的ですが、現在のマンドリンより非常に薄く出来ておりますし、ブリッジは表板に接着してありますので、間違ってスチール弦などを張ったらすぐに壊れてしまいます。



次にピックについてお話しましょう。現在のマンドリンではべっ甲やプラスチック製のピックを使用しますが、バロックマンドリンでは鳥の羽根を使用します。

羽根といっても、いわゆる「ハネ」の部分で弾くわけではありません。正確に申しますと鳥の羽根の芯で弾くのです。
鳥の種類は、特に決まっているわけではないようですが、ガチョウや七面鳥が良いそうです。写真のコピーではわかりにくいと思いますが、まず羽根の芯を縦に半分に切ります。指でつまんで持てるくらいの長さにして、先端をやすり等できれいにします。これで羽根ピックの出来上がりです。硬さやしなり具合が丁度良いのでしょうか。 ヴィヴァルディの時代はこのピックを使っていたそうです。
もちろん、お店で売っているものではありませんので、現在でも何とかして羽根を調達して作る…ということになりますね。これを読んで使いたいと思う方は、ご自分で何とかしてください。ちなみにイグチではどうにもなりません。スミマセン…。

演奏について少しお話ししましょう。この楽器を使ってどんな曲を弾くのでしょうか。これは大体お分かりかと思いますが、主にバロック時代の曲を演奏します。もちろん現代の曲を弾いても弾けないことは無いかもしれませんが、バロックマンドリンの音や特徴が生かされる曲であることが必要となるかもしれません。
先ほども申しましたヴィヴァルディなどはその代表ともいえると思います。18世紀にはマンドリンと通奏低音のための曲が多く書かれております。もちろん現代のマンドリンでも弾くことは可能です。 演奏ではトレモロは全くといってよいほど使わず、ダウンアップのみの奏法となります。弦の張力も非常に柔らかいので、右手のタッチは大変デリケートになりますね。

音はどんな感じかと申しますと、現在のものよりも柔らかく優しい感じになります。
バロックマンドリンという言葉から来るイメージとしては、おとなしくてか細い感じがあるかもしれませんが、ボリュームもあり、反響の良いホールで聴くと、なんとも言えない美しい音がします。

私も普段いろんなマンドリンを見ておりますが、バロックマンドリンについては存在は知っていても、知識はほとんどありませんでした。
今回の演奏会で改めて認識を新たに致しました。今後もこのような楽器を使った演奏会が企画できればと思う今日この頃でございます。