ヴィンテージマンドリン

絃楽器のイグチでは、ヴィンテージ楽器のご紹介も行ってなっております。
在庫状況はその時によって異なります。
詳細はイグチまでお問い合わせください。
このページでは、一部の楽器を事例としてご紹介いたします。

Pasquale Pecoraro 1976

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表板:スプルース
ボディ:メイプル
弦長:332mm、ナット25mm
フレット:29

1907年アルピノ生まれ1992年没 
従兄弟であるジャンニーノ チェローネの工房で働きその後独立した。
ラベルにはエンベルガーの弟子と書かれている。エンベルガーは所謂「弟子」と認めた訳ではないようであるが、ローマ型マンドリンの代表格と言ってよい楽器である。その造りは初期のころと後期とでは別物のような様相を呈しているが、1960年以降の作品の評価は高く、重厚、堅牢な楽器が多い。

音は大きく豊かというより鋭く切れ味抜群である。小さい音でもレーザービームのように空間を貫く。ピッキングによる微妙な操作が雰囲気を大きく変える繊細さを持ち合わせている。この楽器は1976年作、氏が製作者として最も脂の乗っている時期の作品である。

Fratelli Vinaccia 1890

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表板:スプルース
ボディ:メイプル
弦長:333mm、ナット29mm
フレット:24

マンドリンを現在の形に定着させたと言われるパスクァーレ ヴィナッチァの息子であるジェンナロとアッキーレがヴィナッチァ社を設立。(フラテッリとは兄弟の意味)
ヴィナッチァの歴史の中では最も隆盛した時期と言える。この工房からは後に独立をして、銘工となる製作者を多く輩出している。

ナポリ型マンドリンとしての確固たる地位と名声を得たヴィナッチァの真骨頂と言えば、豊潤な低音と爽やかにして落ち着きのある音質である。


Giuseppe Calace Classico C 1947

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表板:スプルース
ボディ:メイプル
弦長:333mm、ナット26mm
フレット:27

1923年に来日した有名なラファエレ カラーチェの息子。
1899年にナポリで生まれ1968年同地没、製作者としての系図で言えば4代目となる。父親は天才だったが、楽器製作者としては父親を超えていると思われる作品が多い。第二次世界大戦という不幸な時代を乗り越えてなお、その作風は堅持されているところからも製作者の楽器に賭ける想いを感じる。

戦後間もない頃に製作されたこの楽器は、作者の信念も織り込まれている素晴らしい作品である。


STRIDENTE

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表板:スプルース
ボディ:ローズウッド
弦長:335mm、ナット29mm
フレット:24

ナポリで19世紀から20世紀にわたりマンドリンとギターを製作した。ヴィナッチァには多くの弟子がいたが、その中ではとりわけ多くの本数を製作した有名な工房である。グレードは幅広く、普及品もかなりの本数を製作していた。

1979年~1984年にかけ、16~120ポンドと言う幅のある金額でロンドンのオークション(サザビーやフィリップス)から売りに出されている。

音質は軽く、乾いた音色で煌びやかである。この楽器のような装飾の凝ったタイプも何本か製作されていた。ネック、ヘッドはべっ甲を使用、リブの継ぎ目は溶銀が埋め込まれている。

製作年は不明だが、全盛期の1900年前後と推測される。


Emanuele Egildo 1910

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表板:スプルース
ボディ:メイプル
弦長:333mm、ナット25mm
フレット:24

1870年ローマに生まれイタリアで製作を学んだ後パリに移住、1950年代中頃までは楽器製作をしていたようである。
俗に「フランスのエンベルガー」との評価があるが、実際にルイジ・エンベルガーの弟子であるかどうかは不明。ただ、最上級モデルではエンベルガーNo.5bisのようなヘッドの楽器も存在する。この楽器はシンプルなモデルで最も多く製作していたと思われる。

音量は豊かで柔らかく、優雅な音質が特徴的で女性にも人気がある。最初に持つオールドとしても適しており、とても扱いやすい。





Luigi Corradotti 1894

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表板:スプルース
ボディ:ローズウッド
弦長:326mm、ナット32mm
フレット:24

19世紀後半、イタリア・ローマの製作者であったLuigi Corradottiはサンタクローチェの出身。弟子もいたようだが、大衆向けの楽器としてイタリアでは代表的な楽器の一つであったようである。ナポリ型とローマ型の両方を製作しており、1982年には、彼の製作したナポリ型のマンドリンがロンドンのサザビーズによって販売された記録も残っている。この楽器も当時の廉価版の楽器だったと推測される。音質は軽めだが、音の広がりが美しく、華やかな音が特長である。





Giuseppe Calace No,13 1940

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表板:スプルース
ボディ:ローズウッド
弦長:333mm、ナット27mm
フレット:24

1899年2月21日ナポリ生まれ、1968年1月5日同地没。
4代目ラファエレの次男として幼時より父に従い技能を継承した5代目カラーチェである。
撥弦楽器だけでなく擦弦楽器やギター製作にも力を注ぎ、展示会にて数多くの賞を受賞した。アンナ・アレーナと結婚後、1948年に6代目ラファエレを授かった。後のラファエレ2世である。
第二次世界大戦後、一時とだえていたカラーチェ社を再び創立し、時のビットリオ・エマヌエーレⅢ世より称号を授けられた。
世界大戦真っ只中に製作されたこのNo13は音の煌びやかさに加え、パワフルさも兼ね備えている。音がストレートに飛んでいくイメージで、音量や音の伸びは申し分ない。







Kobayashi Shigeru 2019

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表板:スプルース
ボディ:ローズウッド
弦長:332mm、ナット26mm
フレット:29

マンドリンリペアも手掛ける小林茂氏が製作。ヴィナッチァを研究して形にした楽器である。

マンドリンを現在の形にしたパスクアーレ・ヴィナッチァへのオマージュと言っても過言ではない。このルックスは使用する材料から仕上げに至るまで拘り抜かれており、現代のヴィナッチァと呼ぶにふさわしいものである。

音もヴィナッチァ特有の音色に近い上、現代の力強さも兼ね備えている。年を重ねるごとにその音はヴィナッチァに近づいていくような気配を感じる。